日ASEANビジネスウィーク2021

タイの BCG(Bio, Circular, Green)
分野での新たなビジネス機会

2021年5月28日(金)15:30~16:45(日本時間)

5日目プログラム1の画像

概要

 日ASEANビジネスウィークの結びとなった本セッションでは、タイのBCG(Bio, Circular, Green)経済政策に焦点を当て、タイ政府からのBCG経済及び支援制度の紹介と日本企業への積極的な投資の呼び掛けがあった。また、既にタイのBCG分野で事業展開している日本企業2社と支援機関および金融機関からの登壇者を迎えて、タイで広がるBCG分野における事業機会について議論が交わされた。

 開会挨拶では、竹谷ジェトロ東南アジア調整センター長 兼 バンコク事務所長からBCG経済は、タイ政府が経済成長戦略の中心に据えており、BOI(タイ投資委員会)が同分野での誘致を強力に推進していることを紹介。その上で、ジェトロも日本企業への同分野での取り組みをサポートしており、本セッションが視聴する日本企業にとって新たな事業展開の検討につながることを期待していると述べた。

 続く基調講演では、BOIのDuangjai Asawachintachit長官が、BCG経済の4本柱として、1)食品・農業、2)材料・エネルギー、3)医療・医薬と4)観光を紹介した上で、特に、スマート農業、健康・バイオ食品、バイオ医薬品、医療ツーリズム、バイオエネルギー、バイオケミカル等の分野での事業の可能性を紹介した。また、BOIでは、最大10年間の法人税免税や上乗せの支援策など、BCG分野での投資促進を支援するスキームを用意しており、この分野での日本企業の積極的な参入への期待を表明した。

 パネルディスカッションでは、BCG分野でのビジネスに先行して取り組んでいる日本企業のSpiber㈱と㈱カネカに加えて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と㈱みずほ銀行を交えて、本分野における日本企業の強みやタイや東南アジアにおける同分野の新たなビジネス機会と課題について議論がなされた。
 タイは、豊富なバイオマス資源などの原材料調達、将来も含めた市場の大きさ、政府の支援策などの面で、BCGビジネスを展開する上では非常に魅力的であること、そして、タイの政府も民間も本気でBCG分野に取り組み始めており、スピード感をもって対応していく必要がある状況になっていることが共有された。
 日本企業にとっては、特に、生分解、バイオテクノロジー、サーマルリサイクルやケミカルリサイクル等の分野でビジネス機会があること、また、BCG分野はタイ企業、他の外資企業と一緒にマーケットを創造していく部分もあることが議論された。
 一方、BCG分野の製品の従来品に対するコスト競争力不足やビジネス環境整備の遅れ等の課題も指摘され、今後、更なる技術開発や政府支援、並びに国際協力が必要である点も指摘された。

 最後に、5月27日、28日のジェトロ企画セッションの閉会の辞として、北川理事が挨拶。コロナ禍を背景に加速したデジタル化等の変化は、一過性ではなく中長期的に継続するとした上で、日本企業に対して、ASEANビジネスでは、自社事業の延長線上に新たな視点を加える方法もありうること、日本側が学ぶという意識を持って現地企業と付き合うこと、及び産官学金の連携拡大の重要性を強調。ジェトロとしては新たなビジネス機会の情報提供、その実現に向け取り組んでいくと表明した。今回ジェトロが企画した各セッションが参加者の新たなビジネスチャンスの気づきとなることを祈念して締めくくった。

開会挨拶

竹谷 厚(日本貿易振興機構 東南アジア調整センター長 兼 バンコク事務所長)

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 Bio, Circular, GreenのBCG経済は、タイ政府が政策の中心に据えている分野である。今年の1月には、プラユット首相がBCG経済を国家戦略モデルに位置付けると表明し、タイ投資委員会(BOI)も、この分野での外資企業の誘致を強力に推進している。
 タイでのビジネスというと、日本企業にとっては、従来型の製造業のイメージが強いかもしれないが、BCGという新しい分野でのタイでの投資機会を認識して、タイでの新たな事業活動に是非取り組んでいただきたい。
 ジェトロバンコクとしても、タイ政府のこの新しい産業政策に呼応したBCG経済への取り組みを始めている。この2月にはBOIとともにウェビナーと商談会を開催し、デジタル化を主要なテーマにしながら、環境にやさしい先端素材に関する日本企業の取組をタイに紹介した。また、3月にグリーンの分野で、タイのエネルギー省とともに、スマートエネルギーに関するウェビナーを開催し、水素を始めとする新しいエネルギーや省エネルギーなどに関する日タイ間での協力を議論した。
 ジェトロバンコクは、引き続き、このBCG分野での日本企業のタイでの取り組みを支援し、そしてタイのBCG経済の発展に貢献していく。
 このセッションが、視聴者の方々の今後のタイ、ASEANでのビジネス展開やタイ国内でのBCG経済の発展の一助になることを祈念している。

基調講演

Duangjai Asawachintachit(タイ投資委員会(BOI) 長官)

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 タイは、元々農業が中心だったことに鑑みると、BCG(Bio, Circular, Green)経済モデルを打ち出したのは自然な流れだと言える。日本企業にとって、BCG分野でどういったビジネスチャンスがあるのかご紹介したい。
 これからの時代、国と企業双方にとって、サステナビリティが極めて重要である。タイでは、バイオ資源を付加価値ある製品にするバイオ経済(Bio Economy)、資源を再利用する循環経済(Circular Economy)、及び経済・社会・環境のバランスを取り持続可能な経済開発(Green Economy)に基づくグリーン経済(Green Economy)のBCGを推進している。
 タイでBCG経済を実現する基盤として、世界トップクラスの生物多様性、競争力の高い食品産業、地理的な優位性、米・キャッサバなど豊富なバイオマス資源、研究開発のインフラ等が挙げられる。
 今後5年以内に、BCG経済はタイGDPの24%を占める規模に成長し、1,650万人の雇用を創出すると試算されている。その成長を支えるのは、1)食品・農業、2)材料・エネルギー、3)医療・医薬と4)観光の4つの柱であり、デジタルなど分野横断的な取り組みも出てくる。
 具体的なビジネス機会としては、例えば、スマート農業、健康・バイオ食品、バイオ医薬品、医療ツーリズム、バイオエネルギー、バイオケミカル等の分野が期待できる。特に、バイオプラスチックでは、現在タイはアジア最大のハブになっており、サプライチェーンの中流での更なる企業参画を期待している。バイオ医薬品でも、コロナワクチン、遺伝子療法など高付加価値な事業が増えてきており、ここでの日本企業の参画も期待している。
 BCG経済を推進するため、BOIでは様々な投資促進スキームを整備している。ビジネス活動に基づく法人税免税期間を最大8年、技術開発に基づく法人税免税期間を最大10年とする優遇制度を現在適用している。追加的なインセンティブも用意しており、例えば、10億バーツ投資で免税期間後にさらに5か年法人税50%になる措置など。また、BOIのBCG経済の支援は、バリューチェーンの上流から下流まで幅広い分野が対象となっており、国としても事業活動のためのインフラや公的サポートを提供している。また、環境影響にプラスの取組やデジタル技術適用へのインセンティブも用意している。
 当委員会は東京・大阪の2か所で事務所を構えており、日本企業も是非気軽に問合せしていただきたい。

パネルディスカッション

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パネリストによるショートプレゼンテーション

萬木 慶子(新エネルギー・産業技術総合開発機構 アジア地域総代表 兼 バンコク事務所長)

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、1980年に経済産業省傘下に設立された公的研究開発マネジメント機関である。バンコク事務所はASEAN10か国を含む17カ国を管轄。NEDOは、「エネルギー・地球環境問題の解決」と「産業技術力の強化」を主要なミッションとし、技術戦略の策定やプロジェクトの企画・立案を行っている。また、プロジェクトマネジメントとして、産学官の強みを結集した体制構築を行い、成果が最大化されるように研究開発を推進している。
 当機構の国際実証事業制度は、主に以下の三つがある。1)エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業、2)民間主導による低炭素技術普及促進事業、3)クリーンエネルギー分野における革新的技術の国際共同研究開発事業である。これら制度のタイでのBCG分野活用事例として、余剰バガス原料からの省エネ型セルロース糖製造システム実証事業が挙げられる。サトウキビの搾りかすであるバガスについて、バイオエタノール用途だけでなく、ポリフェノールやオリゴ糖などの高付加価値品を併産することができることに加え、従来の濃縮工程において、50%以上の省エネができる見込みであり、画期的な事業。
 NEDOの支援制度等について、質問・提案などあれば是非お気軽に、NEDOバンコク事務所までご連絡いただきたい。

関山 和秀(Spiber ㈱ 取締役 兼 代表執行役)

 当社は、2007年に設立した大学発のベンチャー企業で、今はタイも含めると約260名まで社員も増えてきている。
 タンパク質は20種類のアミノ酸を組みあわせることで、様々な種類の材料を設計でき、幅広い用途がある。タイに初の量産プラントを建設したのは、サトウキビはじめ豊富なたんぱく質原料があったため。当社の技術は、発酵プロセスを用いて「Brewed Protein」というタンパク質系製品を製造している。このBrewed Proteinは、化石資源を使わないバイオベースの材料であり、かつ優れた生分解性を持っているという2つの特性があり、特にグローバルアパレル企業などからの引き合いが強い。また、軽量材料として、輸送機器の軽量化などにも活用されている。
 2018年に、当社はタイに進出を決め、年間百トン以上の製造能力を有するマザープラントを建設し、今年3月に竣工、年内に本格的な商業生産を開始する予定であり、タイのこのプラントは今後の核になる。BCG分野はこれからの世界をけん引していく産業と考えており、その1つとして注目されているタンパク質では世界トップレベルで活動している。この分野でタイをベースにして頑張っていきたい。

三輪 元一(㈱カネカ Green Planet Global Planning & Marketing Group グループリーダー)

 当社は、総合化学メーカーとして衣食住、医療まで幅広い事業を展開している。世界的に関心が高まっているプラスチックごみ問題に対して、カネカ生分解性ポリマーGreen Planet™(以下、Green Planet)でこの問題の解決に貢献したい。
 Green Planetは、100%植物由来かつ幅広い環境下で高い生分解性を有するという2点の特性を持つ環境配慮素材である。微生物に植物油を与えて、その体内に蓄積されたもので、万が一、自然環境下に流出しても、そこの微生物によって水とCO2に生分解される。微生物の多い土壌の中だけでなく、これまで難しいとされていた海水中でも生分解するというのが特徴。製品や環境中の微生物の量によって分解のスピードは異なるが、一例では、Green Planetを活用したストローは当社高砂工業所付近(兵庫県高砂市)から採取した海水(23℃)に漬け約3カ月で多くが分解された。
 当社では、主要なマーケットでのGreen Planetの認証取得を進めており、認証制度が整っている欧州では、当社一部グレードで土壌・海洋生分解性など4種の環境下での認証を取得しており、バイオマス素材の認証、食品用途でも使える認証も取得済み。また、タイでも食品用途のFDA認証の取得を現在進めている。
 Green Planetは従来の石油化学由来のプラスチックのように成形加工ができることも特徴。レジ袋やストロー、そしてカトラリー等を製品化している。
 日米欧で先行して活動しているが、東南アジアも主要なマーケットと認識しており、今後展開を進めていきたい。

1st topic: タイの魅力と市場動向

  • 久保田 康裕氏(㈱みずほ銀行 常務執行役員 アジア・オセアニア地域本部長)

  • タイでの地場企業や日本を含む外国企業からのBCG経済に関連した投資は、着実に増えている。背景として、世界的にSDGsやESGが共通認識として高まり、廃プラスチックや気候変動に関連する各国の規制強化が加速している。

    タイは海洋プラごみの排出量は世界6位で社会課題となっており、2019年にはプラスチック製品使用削減のロードマップを策定し、今年の1月に首相がBCGを国家戦略モデルに位置付けた。タイは、腹を括って、CO2排出量の抑制と成長を同時に実現するBCG経済を、単なる環境政策ではなく成長ドライバーと位置付けた。タイの企業は、ケミカルリサイクル、再生プラスチック、バイオマスエネルギーなど幅広く取り組んでおり、政府・民間ともに本気で取り組んでおり、投資する側のスピード感も大事になっている。

  • 関山氏(Spiber)

  • タイをマザープラント建設地として決めた一番の理由は、原材料を安定的に調達できる点。

    また、タイでは、当社が特に注力するアパレルや輸送機器分野のサプライチェーンがしっかり整っている点も立地場所選定理由の1つ。

    加えて、タイ政府からの立地場所選定やプラント建設などに係る多面的な支援も大きなサポートになった。今後の工場拡張も考えている。

  • 三輪氏(カネカ)

  • タイは、東南アジアの中で地理的にも中心で、経済的にも発展した国で、プラスチック関係の需要も大きい。

    さらに、観光立国という同国方針のもと、海を含めた自然環境を大切にする価値観を持っており、海洋生分解性で強みのある当社の製品が合致すると考えている。

    当社では、グローバルに成功しているビジネスは、日米欧と東南アジアの4拠点に工場を持つ形でカバーしており、将来はGreen Planetも東南アジア、タイで生産していきたい。

  • 萬木氏(NEDO)

  • BOIドゥアンジャイ長官からも紹介があった、BCG経済の4つの柱のうち、特に農業・食品と健康・医療分野での活発な動きが目立っている。例えば、タイ国内で、大豆由来の肉、豆由来の乳製品、糖尿病患者向けの特殊な糖等が次々と開発されている。さらに、飲料水の有害物検査センサーや動物骨を使った濾過水製造機等のユニークな開発も行われている。

    また、タイは2030年までにリサイクル可能なバイオマス由来のプラスチックを導入していく計画もあり、バイオ化学製品に対するニーズもこれから高まっていくと予測されている。

    最終製品だけでなく、豊富なバイオ資源から効率的に一次加工品を製造する技術、それらの一次加工品の材料となる作物などを安定的に供給できる技術、そこにデジタル技術を融合できれば、今後のタイで非常に有望な分野になると考える。

2nd topic: BCG分野における日本の技術優位性

  • 三輪氏(カネカ)

  • 生分解性プラスチックを製造している同業他社は競合としてだけではなく、むしろマーケットを共に広げていく同志と捉えている。他社の生分解性プラスチックを当社で使うこともあり、それぞれの長所・短所をうまく補って使っていく。様々な生分解性プラスチックの中でも、海水中での生分解性は、当社Green Planetにおける特徴。

    当社は、プラスチックなどの製造だけでなく、発酵技術を昔から手掛けており、その両方の技術・ノウハウを併せ持っていることが強みで、Green Planetも開発できた。

    健康経営にも力を入れており、様々な企業との協業の可能性を幅広く検討していきたい。

  • 久保田氏(みずほ銀行)

  • 日本企業が勝負できる分野は4つ。1つは、今日も話に出ている生分解性プラスチック。2つ目はバイオテクノロジー分野で、農業・ヘルスケア分野だけでなく、アパレル、化粧品、香料、食品添加材などにポテンシャルがある。

    残り2つは、サーマルリサイクルとケミカルリサイクル。サーマルリサイクルで短期的な成果を追い、ケミカルリサイクルで本格的な循環型社会の実現を目指すというスピード感ではないか。サーマルリサイクルについて、タイでは廃棄物の最終処分が適切にできていない部分も多く、日系のプラントエンジ会社の技術力で勝負できる。

    ケミカルリサイクルでは、今年の1月にタイ初の実証プラントが稼働しており、普及が期待される。日本企業は、原料をモノマーに戻す技術やガス化技術などで貢献できる。

3rd topic: BCG分野でのビジネス展開の課題

  • 三輪氏(カネカ)

  • 石油化学由来プラスチックのコスト競争力が非常に高い。生分解性プラスチックのコスト削減に向けて事業者として当然に努力はしていくが、コスト面での政府による支援策があればビジネスを加速できると考えている。

  • 関山氏(Spiber)

  • カネカの三輪氏と同意見である。社会全体で負担すべきコストがあるはずだが、石油製品の価格にはそれが反映されていないと感じている。例えば、実現は簡単ではないと思うが、プラスチック税を導入して、その税収をイノベーション等に充当するような政策も検討してはどうかと考えている。

  • 萬木氏(NEDO)

  • 国際実証支援の仕組みを改めて紹介したい。国際実証研究の前段階として、相手国の政策・ビジネス環境調査などをサポートしている。また、実証研究に移る前には、NEDOと相手国政府機関とMOUを結び、相手国政府の各案件の認知を高め、将来の普及等に向けた関係者の協力の基盤を作っている。

    このステップを踏んで、Circular、Greenの分野においてタイで実証研究を進めている案件を紹介したい。タイでは使用済み自動車が増加する中、効率的な解体プロセスが構築されておらず、実効性を高める制度も整備されていないため、資源の再利用割合を高める解体プロセスや国際資源循環の構築、制度設計への協力を行った。

    NEDOは、このような支援枠組みで、日本企業が海外に進出する際のハードルを下げるサポートをしている。

  • 久保田氏(みずほ銀行)

  • Greenの分野は難しい分野。ASEAN地域でのエネルギー消費量やCO2排出量は今後増加する見込みである。その需要に対応しつつ、低炭素・脱炭素技術の導入をしていく長期的な計画が必要。

    タイでは、2037年までの長期電源開発計画が公表されており、新設電源の6割は、再生可能エネルギーとガス火力とされている。EVを含む分散型電源の活用やスマートグリッドなども検討されるなど、中長期的にカーボンニュートラル実現を宣言する会社も増えてきた。タイは東南アジアの中では、相対的にGreen分野では進んでいる。

    しかし、ASEAN地域全体としては、この分野での取り組みはまだ限定的であり、計画・立案面での国際協力や各国政府の推進対策を進めるなど、中長期的な取り組みが必要である。

Closing

  • 三輪氏(カネカ)

  • 経済成長と環境問題解決は必ずしも相反するわけではない。美しい自然を守ることに、ビジネス面から貢献できるよう頑張っていきたい。

  • 関山氏(Spiber)

  • 長年NEDOの支援を受けながら、技術を蓄積できている。

    この技術のシーズに、タイの豊富なバイオ資源を組み合わせて活用しながら、大きな産業を作り上げていきたい。

  • 萬木氏(NEDO)

  • 東南アジアにはBCG分野で多くの事業可能性が存在している。技術革新のスピード感は高まっており、時期尚早という言葉は、研究・技術開発とその導入のプロセスの中では不要だと考えている。事業を推進する際には、NEDOの支援スキームを是非活用していただきたい。

  • 久保田氏(みずほ銀行)

  • タイの経営者は、SDGsないしBCG経済を成長戦略と言い切っており、日系企業をパートナーとして切望している。当行は、BCG経済に関心のある企業を、市場調査・パートナー紹介・資金提供の面でサポートしていきたい。

閉会挨拶

北川 浩伸(日本貿易振興機構 理事)

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 新型コロナウイルスはデジタル化を加速したという見方があるが、新たな生活様式や移動方式、生産現場での変化は、一過性のものではなく、中長期的に継続していくトレンドだと捉えている。
 この中で、3つの重要な視点を共有したい。
 1)デジタルやサステナビリティは、特別なイノベーションを起こすことだけでなく、今までの事業活動の延長線上からでも考えられる。例えば、製造業においては、デジタルを活用した生産ライン効率化や販売データ可視化等がトレンドとなっているが、自社で必ずしもデジタルの専門知見を持つ必要はない。既存事業に新たな視点を加えることを実現の第一歩とし、ASEANのパートナーと協力して一緒にデジタル化を推進していくというアプローチもありうる。
 2)東南アジアでのデジタル・サステナビリティ関連の取り組みは、ビジネスのやり方に大きな変化をもたらしている。東南アジアでは幅広い分野で多様なニーズが存在しており、日本企業のビジネスのやり方も変えていく必要がある。これからは日本企業の側が学ぶ立場という意識も持ちながら、現地パートナーの力を借りてWin-Winの関係を構築していくことが求められている。
 3)企業がゼロから新たな領域に踏み出すのは困難を伴うものであるため、産官学および金融機関の連携は、この転換期にあるASEANビジネスに取り組む上で不可欠だと考えている。今回のようなフォーラムのほか、経済団体、中小機構、JICAといった関係機関の支援策も有効。ジェトロは引き続き、貿易投資相談、販路開拓・進出支援等を通じ、新たなビジネス機会の情報提供、またその実現に向けて引き続き活動していく。
 複数のセッションを通じて、ASEAN現地で若いリーダーが新たな経済・社会の構築に向けて躍動する姿をお伝えしてきたが、皆様の新たなビジネスチャンスの気づきとなれば幸い。

問い合わせ先

日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)事務局 鈴木

E-mail:disg@ameicc.org